インドの公用語とは?インド社会が抱える8つの言語問題

インドの公用語とは?インド社会が抱える8つの言語問題

インドのことわざで「15マイルごとに方言が変わり、25マイルごとにカレーの味が変わる。100マイル行けば言葉が変わる」というものがあります。また、ルピー札には15個の言語でその紙幣額が表記されています。それほどインドでは多様な言語が話されています。今回は、日本人にはなかなか理解できないインドにおける多言語社会の問題をみていきましょう。



 

インドの公用語とは?インド社会が抱える8つの言語問題

 

1. 22の指定言語、2,000の方言

インドの公用語はヒンディー語で、準公用語は英語です。また、22の指定言語がインド憲法で定められています。(憲法の第8付則において定められていることから通称「第8付則言語」と呼ばれています。)(アッサム語、ベンガル語、ボド語、ドーグリー語、グジャラート語、ヒンディー語、カンナダ語、カシミール語、コーンカニー語、マイティリー語、マラヤーラム語、マニプル語、マラーティー語、ネパール語、オリヤー語、パンジャーブ語、サンスクリット語、サンタル語、シンド語、タミル語、テルグ語、ウルドゥー語)さらに、インド全域では何と約2,000もの方言があるとされています。つまり、公用語であるヒンディー語が話せたとしても、インド全域でスムーズな言語コミュニケーションができるわけではないのです。

 

2. 言語教育において、3言語以上の習得が必要

どの言語をいつ学習させるべきかという問題が常に教育政策の課題となります。初等・中等教育では、3言語が必修です。母語または州の指定言語、ヒンディー語(ヒンディー語州ではその他の州の言語)、英語となります。そのため、3言語以上をインド人が話すのは日常茶飯事です。高等教育以上においては英語が教育用語として使用されます。

 

3. ヒンディー語話者に有利な言語政策への反発

ヒンディー語話者に有利ともいえる言語政策に反発を持つ地域もあります。タミル・ナドゥ州では、タミル語と英語だけを教えています。

 

4. 地域や出身によって話す言葉がまったく異なる

インドは国土が広大なため、それぞれの言語のルーツも異なり、日本の方言とは比較にならないほど「違う言語」と言われています。例えば、家庭内の祖父母と孫も、教育課程や居住環境が異なれば、主に話す言語はお互いに違ったりもします。このような、まったく異なる言語環境に適応する工夫として、例えば首都デリーには、パンジャーブ州出身者が住む住宅地があります。大都会では、同じ地区に同郷の人たちがまとまって住む傾向が高くなるのです。

 

5. 文字がまったく異なる

たとえば、話し言葉として同じ言語であっても、文字が異なる場合があります。ヒンディー語とウルドゥー語は話し言葉としてはほぼ同じです。しかし、文字が違います。ヒンドゥー教徒はデーヴァナーガリー文字を用いたヒンディー語、イスラム教徒はアラビア文字を用いたウルドゥー語を使います。

 

6. 英語の立ち位置

英語はイギリスの植民地時代から使用され、現在では準公用語の立ち位置となっています。インド各地域で必修となっているので、現在でも国内外でのコミュニケーション、ビジネス、科学技術の発展に欠かせない言語となっています。インド人同士でも、英語の方がスムーズにコミュニケーションが取れるという場合も少なくないでしょう。都市部の私立校などは初等教育の早い段階から英語を取り入れており、社会経済的地位(中間所得層以上)を表す指標になっているともいえます。また、英語を重用視するあまり、母国語の教育がおざなりになる、という見方もあります。

 

7. 識字率・就学率の問題

多言語社会だからこその複雑な制度に加え、何よりもまず、識字率や就学率の向上という課題も長年挙げられており、インド教育における困難が想像できます。ここ数十年でインドの識字率・就学率は目覚ましく上昇してきましたが、地域差、男女差など、まだまだ課題があります。

 

8. 言語マイノリティの苦難

山岳や辺境地域などには、多数の方言が存在しています。カースト制度におけるジャーティ(生まれを同じくする集団。職業は基本的に世襲制。)ごとに、異なる言語を話す場合、コミュニケーションがうまく取れなかったり、アウト・カーストのような社会的差別と結びついてしまうことは、コミュニティにとって致命的な問題となります。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?
インドの多言語社会ならではの言語問題が見えてきました。識字率、就学率向上の課題を抱えた上に、複数の言語を学ぶということは容易なことではありません。今回挙げたように、様々な課題がありますが、私たちも、多言語社会インドに学ぶことが多くあります。インドの近年の経済的発展は、幼少の頃からマルチリンガルな人材を育てることが可能となってきているからこそだと言えるでしょう。世界的に見れば、日本のような単一言語国というのはむしろ珍しいのです。12億人が住み、多様な言語が存在する、広大なインド。それ自体で一つの世界を形成しているといっても過言ではありません。だからこそ、多言語多文化社会で暮らすためのコミュニケーションの工夫が生まれるのです。

 

インドの公用語とは?インド社会が抱える8つの言語問題

1. 22の指定言語、2,000の方言
2. 言語教育において、3言語以上の習得が必要
3. ヒンディー語話者に有利な言語政策への反発
4. 地域や出身によって話す言葉がまったく異なる
5. 文字がまったく異なる
6. 英語の立ち位置
7. 識字率・就学率の問題
8. 言語マイノリティの苦難

 


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